詫摩武俊『性格はいかにつくられるか』環境/遺伝/心理学入門

2017年6月10日

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ISBN-13:978-4004120728
ISBN-13:9784004120728
ISBN-10:4004120721

心理学が職業上、役に立つかどうか?は、教育課程で教育心理学が存在することがそれを物語っています。子供の頃、親から激しく注意されたときは「(一部は自分の非を認めつつ)今の叱り方は論理性に欠ける」と思うようにし、そのときは決して反抗せず、その後で教育心理学の本を読んでは気分を晴らしていたこともありました。

心理学は、1800年代後半に哲学から派生したというのが通説です。詫摩武俊『性格はいかにつくられるか』(岩波書店、1967年)第二章・性格の研究史にも触れられています。本書は、性格が形成されるのは環境的要因か、あるいは遺伝的要因かの二項対立的に論が展開します。前置きとして、テストと観察から結果を導く方法には、三つの注意事項があり、一つには光背効果(容姿の美しい人はいい人のように思われるようなこと)(4ページ)、二つ目に場面による行動の規定(誰々の前では緊張すること)、そして三つ目には観察者によって評価や判断が一致するとは限らない(5ページ)ことが挙げられています。

「一定の原理に基づいて組織的に類型を設定し、それによって多様な性格を整理し、分類して、その理解を容易にしようとする」(12ページ)類型学の欠点としては、どの型に入るのかはっきりしないものの排除、性格特性の一括付与、行動を説明するには不十分な原因と結果の循環、文化的・社会的要因への考慮の欠如があります。

性格が環境によって影響を受けると仮定した場合、社会階層、地域、性別、親子・兄弟関係の比較研究があり、一方で、性格の遺伝による影響を受けているとするならば、双生児法による研究を例に挙げています。双生児法は、一卵性と二卵性の双生児相互間の相関関係を調べるため、ある環境下での行動、病歴、犯罪歴、身体特性等を比較観察します。ただし、双生児としてのネーミングにより「人間関係は極めて密接となり、双生児共同体といって、以心伝心的に理解し合えるようになる」(160ページ)こともあり、双生児相互間の類似点を「すべて遺伝に帰することはできない」(160ページ)といえます。

性格が、環境もしくは遺伝の影響を受ける他に、第5章では「生理的機能に見られる特徴、容姿、体力、健康状態」(161ページ)が性格を形成するとしています。神経・ホルモン・投薬・栄養状況の影響です。

しかし、経験上、私を含め周囲の人にも見られることですが、あのときの、あるできごとが原因で、性格が180度変わってしまったということがあります。性格というより、ものの見方というべきでしょうか。この点について180ページに次の記述がありました。「ある人との出会いや別れ、ふと手にした本、性についての不幸な体験などが、消し難い印象をその人に与え、それがその人の性格の形成に強い影響を持つことがある。」現代版では、これにインターネット上でのコミュニケーション、情報収集から受ける影響が加わります。

ただ一点の偶発的できごとでショックを受けたり、逆に明るい方向へ視界が開けたりする、そうしたことで性格が変わってしまうことは、性格の遺伝性からすると考えにくいことです。性善説や性悪説のように例えば「温和・冷酷」といった性格は不変で、その後に情報が付け加えられ、根本の性格の上に色付けされて、ある性格になったと見えているだけということもありえます。

性格を判断するには、ありとあらゆる条件、制約があるのでは?と思い始めたときから、少しずつ興味関心が心理学から哲学・社会学にシフトしていきました。そのきっかけとなった一冊として本書を外すことはできません。

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知り合いの農家の方のお話によると、ある椎茸はクラシックよりもマツケンサンバのような元気のある曲の方が、早く勢いよく育つそうです。椎茸の性格ではありませんが、発育への影響は環境要因が大きいという一例です。

私は、家族は大人ばかりでひっそりと一人時間が多く、たまに隣家の猫と会話する程度でした。心が広く深く、温かな友人、自分にはない能力を持つ友人を尊敬し、憧れていました。結局、今もあまり変わりません。たとえ、友人が遠く離れ、疎遠になっていても。